AIを使うと自分の力が落ちる気がする|落ちるのは考える力ではありません

使い続けて大丈夫なのか不安な方へ。研修で見てきた、危ない使い方と平気な使い方の違いです。
この記事でわかること
- 落ちるのは「決める回数」
- 危ないのは分からない分野
- 線引きの決め方
この記事の要点
| 見出し | ひとことで言うと |
|---|---|
| 第1章|落ちるのは「考える力」ではなく「決める回数」 | まず、何が落ちるのかをはっきりさせます。 |
| 第2章|研修で見た、2つの使い方 | 同じ「メールをAIに書かせる」でも、やり方が2通りあります。 |
| 第3章|危ないのは、分からない分野で使うとき | ただし、これには条件があります。 |
| 第4章|「もう自分では書けない」と言った人 | 一度だけ、本当に落ちている方に会ったことがあります。 |
| 第5章|一人だと、この線引きが分からなくなる | ここまで書いてきたことは、言われれば当たり前に聞こえます。 |
| 終章|道具を疑う人のほうが、長く使えます | ここまで書いてきて、思うことがあります。 |
| 今日やること(1つだけ) | 次にAIに文章を書いてもらったとき、1か所だけ直してください。 |
| あとがき | この記事は、自分に向けても書いています。 |
研修の終わりに、真顔でこう聞かれたことがあります。
冗談のつもりで言ったわけではありませんでした。
その方は、本気で心配していました。
企業向けのAI研修で講師をしています。
整骨院、介護、電気設備など、ふだんパソコンをあまり使わない現場が中心です。
同じ心配は、40代・50代の方から特によく聞きます。
- 文章を考える力が落ちるのではないか
- 自分で調べなくなるのではないか
- 若い人に教えられなくなるのではないか
この不安は、間違っていません。
実際に落ちる人がいます。
ただし、落ちる人と落ちない人の違いは、使う量ではありませんでした。
もっとはっきりした分かれ目があります。
この記事では、その分かれ目を書きます。
それでは、始めましょう。
01第1章|落ちるのは「考える力」ではなく「決める回数」
まず、何が落ちるのかをはっきりさせます。
AIを使っても、考える力そのものは落ちません。
計算機が出たとき、暗算は遅くなりましたが、数学ができなくなった人はいませんでした。
落ちるのは、自分で決める回数です。
たとえば、メールの返信をAIに書いてもらうとします。
出てきた文章を、そのまま送る。
これを毎日続けると、「どう書くか」を決める場面が消えます。
文章力が落ちるのではありません。
文章を決める、という行為をしなくなるだけです。
ここが曖昧なまま「AIを使うと力が落ちる」と言われているので、
話が噛み合わなくなっているのだと思っています。
落ちるのは能力ではなく、判断の出番です。
02第2章|研修で見た、2つの使い方
同じ「メールをAIに書かせる」でも、やり方が2通りあります。
ひとつ目。
ふたつ目。
同じように頼んで、出てきたものを見て、
「ここは堅すぎる」「この一文は要らない」と直してから送る。
後者の方は、半年後も文章力が落ちていませんでした。
むしろ、前より良くなっている方もいました。
理由は単純です。
人は、ゼロから書くより、出てきたものを直すほうが、違いに気づきやすいからです。
自分で書いているときは、自分の文章しか見えません。
AIが書いたものを見ると、「自分ならこう書かない」という判断が働きます。
この「自分ならこう書かない」が、実は一番の訓練でした。
研修でも、わざとおかしな文章を出させることがあります。
出てきたものを見て、どこが堅いかを言ってもらう。
これをやると、ほぼ全員が指摘できます。
自分では書けないと言っていた方でも、です。
書く力がないのではなく、使う機会がなかっただけ。
そう思わされる場面が、何度もありました。
03第3章|危ないのは、分からない分野で使うとき
ただし、これには条件があります。
直せるのは、自分が分かっている分野だけです。
20年やってきた仕事の文章なら、おかしいところに気づけます。
初めて触る分野だと、気づけません。
研修でも、ここは必ずお伝えしています。
自分の仕事に使うぶんには、心配しなくていいです。
あなたのほうが詳しいので、AIが間違えたら分かります。
危ないのは、まったく知らない分野で使うときです。
法律、医療、税金。
このあたりは、出てきたものが正しいかどうか、自分では判断できません。
判断できないものをそのまま使うと、本当に力が落ちます。
正確に言うと、力が落ちる前に、間違ったものを信じてしまいます。
だから、分野で分けてください。
- 自分が詳しい分野 → どんどん使っていい
- まったく知らない分野 → 下書きまで。確認は必ず人か公式の情報で
この線引きだけ覚えておけば、だいたい大丈夫です。
04第4章|「もう自分では書けない」と言った人
一度だけ、本当に落ちている方に会ったことがあります。
その方は、1年ほど毎日AIに文章を書かせていました。
ある日、AIが使えない環境で文章を書くことになり、
「書き出しが思いつかなくなっていた」と言っていました。
話を聞いて分かったのは、その方は一度も直していなかったことです。
頼む、出てくる、そのまま使う。
この繰り返しを1年続けていました。
本人も、途中で薄々気づいていたそうです。
それでも、出てくるものが悪くなかったので、直す理由がなかった。
これは、よく分かります。
直すのは面倒です。
そのまま使えるなら、そうしたくなります。
ただ、そのまま使うという選択を1年続けると、
決める回数がゼロになります。
対策は、ひとつだけです。
毎回、1か所だけ直す。
内容が良くても、1か所だけ、自分の言葉に変える。
それだけで、判断の出番が残ります。
面倒に聞こえるかもしれませんが、1か所です。
語尾を変えるだけでも構いません。
大事なのは直した内容ではなく、
「このままでいいか」と一度考える時間を作ることのほうです。
05第5章|一人だと、この線引きが分からなくなる
ここまで書いてきたことは、言われれば当たり前に聞こえます。
ただ、一人で使っていると、自分がどちら側にいるのか分からなくなります。
毎日そのまま使っていても、本人には自覚がありません。
困っていないからです。
気づくのは、使えない状況になったときか、
誰かに「それ、丸投げしてない?」と言われたときです。
だから、ときどき外から見てもらうのが効きます。
職場に一緒にやっている人がいるなら、
お互いの使い方を見せ合うだけで気づけます。
いない場合は、人の使い方が見える場所に入るという手もあります。
講座でも、勉強会でも構いません。
自分の使い方が普通なのかどうかは、
他の人のやり方を見ないと、一生分かりません。
06終章|道具を疑う人のほうが、長く使えます
ここまで書いてきて、思うことがあります。
心配するということは、自分の頭を使っているということだからです。
本当に危ないのは、便利だと思って何も疑わずに使い続ける人です。
車を運転するとき、怖いと思っている人のほうが事故を起こしません。
同じことだと思っています。
冒頭の「バカになりませんか」という質問。
あの質問が出た時点で、その方は大丈夫でした。
07今日やること(1つだけ)
次にAIに文章を書いてもらったとき、1か所だけ直してください。
どこでも構いません。
語尾でも、言い回しでも、順番でも。
それだけで、判断の出番が残ります。
08あとがき
この記事は、自分に向けても書いています。
研修の資料を作るとき、私もAIに下書きを頼みます。
そのまま使うことは、ほとんどありません。
ただ、忙しい週はどうしても手が止まります。
そういうときほど、1か所だけ直すようにしています。
教える側も、同じことで悩んでいます。

