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AIを使うと自分の力が落ちる気がする|落ちるのは考える力ではありません

ああい(企業向けAI研修 講師)|更新 2026.10.23読む目安 6分
AIを使うと自分の力が落ちる気がする|落ちるのは考える力ではありません

使い続けて大丈夫なのか不安な方へ。研修で見てきた、危ない使い方と平気な使い方の違いです。

この記事でわかること

  • 落ちるのは「決める回数」
  • 危ないのは分からない分野
  • 線引きの決め方

この記事の要点

見出しひとことで言うと
第1章|落ちるのは「考える力」ではなく「決める回数」まず、何が落ちるのかをはっきりさせます。
第2章|研修で見た、2つの使い方同じ「メールをAIに書かせる」でも、やり方が2通りあります。
第3章|危ないのは、分からない分野で使うときただし、これには条件があります。
第4章|「もう自分では書けない」と言った人一度だけ、本当に落ちている方に会ったことがあります。
第5章|一人だと、この線引きが分からなくなるここまで書いてきたことは、言われれば当たり前に聞こえます。
終章|道具を疑う人のほうが、長く使えますここまで書いてきて、思うことがあります。
今日やること(1つだけ)次にAIに文章を書いてもらったとき、1か所だけ直してください。
あとがきこの記事は、自分に向けても書いています。
「これ、使い続けたら自分がバカになりませんか」

研修の終わりに、真顔でこう聞かれたことがあります。

冗談のつもりで言ったわけではありませんでした。
その方は、本気で心配していました。

企業向けのAI研修で講師をしています。
整骨院、介護、電気設備など、ふだんパソコンをあまり使わない現場が中心です。

同じ心配は、40代・50代の方から特によく聞きます。

  • 文章を考える力が落ちるのではないか
  • 自分で調べなくなるのではないか
  • 若い人に教えられなくなるのではないか

この不安は、間違っていません。
実際に落ちる人がいます。

ただし、落ちる人と落ちない人の違いは、使う量ではありませんでした。
もっとはっきりした分かれ目があります。

この記事では、その分かれ目を書きます。

それでは、始めましょう。

01第1章|落ちるのは「考える力」ではなく「決める回数」

まず、何が落ちるのかをはっきりさせます。

AIを使っても、考える力そのものは落ちません。
計算機が出たとき、暗算は遅くなりましたが、数学ができなくなった人はいませんでした。

落ちるのは、自分で決める回数です。

たとえば、メールの返信をAIに書いてもらうとします。

出てきた文章を、そのまま送る。
これを毎日続けると、「どう書くか」を決める場面が消えます。

文章力が落ちるのではありません。
文章を決める、という行為をしなくなるだけです。

ここが曖昧なまま「AIを使うと力が落ちる」と言われているので、
話が噛み合わなくなっているのだと思っています。

落ちるのは能力ではなく、判断の出番です。

02第2章|研修で見た、2つの使い方

同じ「メールをAIに書かせる」でも、やり方が2通りあります。

ひとつ目。

「取引先に謝罪のメールを書いて」と頼み、出てきたものをそのまま送る。

ふたつ目。

同じように頼んで、出てきたものを見て、
「ここは堅すぎる」「この一文は要らない」と直してから送る。

後者の方は、半年後も文章力が落ちていませんでした。
むしろ、前より良くなっている方もいました。

理由は単純です。

人は、ゼロから書くより、出てきたものを直すほうが、違いに気づきやすいからです。

自分で書いているときは、自分の文章しか見えません。
AIが書いたものを見ると、「自分ならこう書かない」という判断が働きます。

この「自分ならこう書かない」が、実は一番の訓練でした。

研修でも、わざとおかしな文章を出させることがあります。

「わざと堅すぎる謝罪メールを書いて」と頼んでもらう。
出てきたものを見て、どこが堅いかを言ってもらう。

これをやると、ほぼ全員が指摘できます。
自分では書けないと言っていた方でも、です。

書く力がないのではなく、使う機会がなかっただけ。
そう思わされる場面が、何度もありました。

03第3章|危ないのは、分からない分野で使うとき

ただし、これには条件があります。

直せるのは、自分が分かっている分野だけです。

20年やってきた仕事の文章なら、おかしいところに気づけます。
初めて触る分野だと、気づけません。

研修でも、ここは必ずお伝えしています。

自分の仕事に使うぶんには、心配しなくていいです。
あなたのほうが詳しいので、AIが間違えたら分かります。

危ないのは、まったく知らない分野で使うときです。

法律、医療、税金。
このあたりは、出てきたものが正しいかどうか、自分では判断できません。

判断できないものをそのまま使うと、本当に力が落ちます。
正確に言うと、力が落ちる前に、間違ったものを信じてしまいます。

だから、分野で分けてください。

  • 自分が詳しい分野 → どんどん使っていい
  • まったく知らない分野 → 下書きまで。確認は必ず人か公式の情報で

この線引きだけ覚えておけば、だいたい大丈夫です。

04第4章|「もう自分では書けない」と言った人

一度だけ、本当に落ちている方に会ったことがあります。

その方は、1年ほど毎日AIに文章を書かせていました。

ある日、AIが使えない環境で文章を書くことになり、
「書き出しが思いつかなくなっていた」と言っていました。

話を聞いて分かったのは、その方は一度も直していなかったことです。

頼む、出てくる、そのまま使う。
この繰り返しを1年続けていました。

本人も、途中で薄々気づいていたそうです。
それでも、出てくるものが悪くなかったので、直す理由がなかった。

これは、よく分かります。

直すのは面倒です。
そのまま使えるなら、そうしたくなります。

ただ、そのまま使うという選択を1年続けると、
決める回数がゼロになります。

対策は、ひとつだけです。

毎回、1か所だけ直す。
内容が良くても、1か所だけ、自分の言葉に変える。

それだけで、判断の出番が残ります。

面倒に聞こえるかもしれませんが、1か所です。
語尾を変えるだけでも構いません。

大事なのは直した内容ではなく、
「このままでいいか」と一度考える時間を作ることのほうです。

05第5章|一人だと、この線引きが分からなくなる

ここまで書いてきたことは、言われれば当たり前に聞こえます。

ただ、一人で使っていると、自分がどちら側にいるのか分からなくなります。

毎日そのまま使っていても、本人には自覚がありません。
困っていないからです。

気づくのは、使えない状況になったときか、
誰かに「それ、丸投げしてない?」と言われたときです。

だから、ときどき外から見てもらうのが効きます。

職場に一緒にやっている人がいるなら、
お互いの使い方を見せ合うだけで気づけます。

いない場合は、人の使い方が見える場所に入るという手もあります。
講座でも、勉強会でも構いません。

自分の使い方が普通なのかどうかは、
他の人のやり方を見ないと、一生分かりません。

06終章|道具を疑う人のほうが、長く使えます

ここまで書いてきて、思うことがあります。

「これを使い続けて大丈夫だろうか」と心配する人は、だいたい大丈夫です。

心配するということは、自分の頭を使っているということだからです。

本当に危ないのは、便利だと思って何も疑わずに使い続ける人です。

車を運転するとき、怖いと思っている人のほうが事故を起こしません。
同じことだと思っています。

冒頭の「バカになりませんか」という質問。

あの質問が出た時点で、その方は大丈夫でした。

07今日やること(1つだけ)

次にAIに文章を書いてもらったとき、1か所だけ直してください。

どこでも構いません。
語尾でも、言い回しでも、順番でも。

「自分ならこう書く」を1回使う。

それだけで、判断の出番が残ります。

08あとがき

この記事は、自分に向けても書いています。

研修の資料を作るとき、私もAIに下書きを頼みます。
そのまま使うことは、ほとんどありません。

ただ、忙しい週はどうしても手が止まります。
そういうときほど、1か所だけ直すようにしています。

教える側も、同じことで悩んでいます。

*この記事は、講師として研修で受けた質問と、その場でお答えしている内容をまとめたものです。特定の企業の資料や個別の案件の情報は含みません。法律・医療・税務などの判断は、必ず専門家や公式の情報をご確認ください。
この記事を書いた人
あ
あい|スマホAIの教科書

企業向けの生成AI研修で講師をしています。整骨院、介護、電気設備など、ふだんパソコンをあまり使わない現場が中心です。研修で実際に受けた質問と、その場でお答えしている内容を書いています。